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2020年7月末、テストソフトウェア業界のマーケットリーダーであるTricentis社とSAP社のパートナーシップが発表されました。このポストでは、このTricentis社とのパートナーシップで提供される新しいソフトウェアテストのオプションについてご紹介していきます。

これまで、SAPから提供されるソフトウェア・テストのためのツールといえばSAP Solution Managerの機能であるTest Suiteですが、Tricentis社とのパートナーシップによって新しく3つのソリューションが選択肢として追加されました。

Tricentis社とのパートナーシップでSAPから提供されるソリューションは、以下の3つです。

  1. SAP Change Impact Analysis by Tricentis

  2. SAP Enterprise Continuous Testing by Tricentis

  3. SAP Load Testing by Tricentis



ここでは、この3つのソリューションについて、順にご紹介していきます。

SAP Change Impact Analysis by Tricentisとは


SAP Change Impact Analysis by Tricents は、テストのプロセスのうちの「何をテストするか?」に焦点を当てます。一言でいえば、このソリューションは影響分析ツールであるといえます。

このソリューションによって、S/4HANAのリリースアップのような大規模な変更HCMへの法的要件に関わる変更、BWオブジェクトの変更のようなイベント的変更、さらには移送依頼の適用といったような小規模な変更に至るまで、さまざまな規模の変更の内容をコードレベルで解析し、その変更がどの機能に影響するかという情報をプログラムレベルで洗い出すことができます。

加えて、洗い出した影響範囲をリスクベースで重みづけして、優先的にテストすべき項目を洗い出すことができるのもこのソリューションの強みです。コードの開発者は、優先順位の高いプログラムを優先的にテストし、効率的かつ低リスクなテストを行うことができるようになります。

下記の自動化テストツールと組み合わせて、「どの自動化テストを実行すべきか」というような決定を行うことができるようになります。

SAP Solution Manager BPCA との違い


類似の既存機能として、SAP Solution Manager 内の Business Process Change Analyzer (BPCA)があります。BPCAと SAP Change Analysisの大きな違いは、そのリードタイムにあると言えます。BPCAは、その分析の正確性を高めるため実際の本稼働機上の統計情報をもとに解析をおこなっています。有効な統計情報を得るために必要な期間は3か月~とされており、セットアップしてから3か月経過しないとBPCAを有効活用しにくいと言われていました。一方、SAP Change Analysisでは、セットアップしてから約1週間のコードスキャンの後に分析結果の使用が可能になります。


使用開始までのスピードではSAP Change Impact Analysisに優位性がありますが、BPCAにしかできないこととしてビジネスプロセスというカットでの影響範囲分析や実際のオペレーションを行いながら使用プログラムをより的確に解析する機能である動的TBOMの生成があります。
SAP Change AnalysisとBPCAの両方を使用することで、より早く正確な結果を得られると言えそうです。

SAP Enterprise Continuous Testing by Tricentisとは


SAP Enterprise Continuous Testing by Tricentisのフォーカスは、「いかにテストするか?」です。端的に言えばこのソリューションはテスト自動化ツールです。
SAP Enterprise Continuous Testing ( ECT )は、Model-based Test Automation という考え方を採用し、スクリプティングをしないでも直感的に操作できるUIによって簡単にテストスクリプトを作成できるツールです。

また、大きな特徴として、非SAP製品を含む160以上のUI技術のテストをサポートしていることが挙げられます。

SAP Solution Manager CBTA との違い


類似の既存機能として、SAP Solution Manager Component-Based Test Automation(CBTA)があります。この機能は、SAP製品専用の自動化テストツールです。

SAP Enterprise Continuous TestingとCBTAのもっとも大きな違いは、サポートするUIテクノロジの範囲です。CBTAは、SAP GUI・SAP UI5/Fiori・WebDynproなどのSAPのUI技術のテストをサポートしてきましたが、Success Factorなどのクラウドソリューションには非対応ですし、非SAP製品のテストにも対応していません。一方、SAP Enterprise Continuous Testingは、クラウドソリューションと160以上のUI技術に対応しておりSAP製品のハイブリッド環境でのテスト自動化や非SAP製品も含めた大規模なテスト自動化に対応することができます。


なお、CBTAはSAP Solution Managerのメンテナンスが続く限りメンテナンスされますが、クラウドをはじめとしたSAPの新しいUI技術には対応をしないことがアナウンスされています。

CBTAとSAP Enterprise ContinuousTestingの互換性


CBTAで作成した自動化テストスクリプトとECTで作成した自動化テストスクリプトには互換性はありません。

既存のCBTAのテストスクリプトの価値


CBTAで既に作成されたテストスクリプトは引き続き使用していただけます。CBTAのテストスクリプトとECTのテストスクリプトの両方ともSAP Solution Manager Test Suite からのテスト実行・結果管理を行うことができますので、既存のCBTAスクリプトとECTのスクリプトを同時に活用することが可能です。

例えば、①オンプレミス環境の自動化テストは既存のCBTAで実施し、②クラウドでのテストはECTを使用する③SAP製品とインターフェースのある非SAP製品のテストもECTを使用し、①②③のテスト結果はすべてSAP Solution Managerから一元的に確認するというような運用が可能です。

SAP Load Testing by Tricentisとは


最後に、SAP Load Testing by Tricentisですが、こちらは負荷テストのためのツールです。SAP Load Testing by Tricentisを使用することで、テストの対象となるカスタマアプリケーションやアップグレードや変更が、ユーザのパフォーマンス要件を満たすことができるのかを素早く・効率的にテストすることができます。ユーザは、リアルタイムで視認性の高いパフォーマンステスト結果を確認することができます。

なお、SAPの既存製品としてこのソリューションと競合するものはありません。

以上の3つのソリューションはSAPからSolution Extention(SolEx)として、有償でが提供されます。価格等は営業までお問い合わせください。

一方、自動テスト(SAP Enterprise Continuous Testing by Tricentis)機能については、SAPのALM管理ツールであるSAP Solution Managerとのバンドル版・CloudALMとのバンドル版が2021年中に提供される予定(2021年2月現在)です。こちらのバンドル版については使用用途がSAP製品(オンプレミス・クラウド両方)のみのテスト自動化に限定されますが、無償で使用可能となる予定です。